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風花雪花的日子

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余韻に酔いし

スイーツのほど良い甘さが脳細胞の隅々までに行き渡ると、美奈子の寝ぼけた頭は目を覚ました。
 デザイナーは頭の中でイメージを大きく膨らますのが仕事だった。脳をフル回転させる状態を保たないといけない。だから、糖分を補給することは、良いウォーミングアップになる。そう納得することが、朝からスイーツを堂々と頬張る美奈子の大儀名分だった。
 ナポレオンパイを片づけた美奈子は、漸く手に入れた薄ピンクのスタールビーを眺めた。頬を伸ばしながら右手を少し上げ、天井の明かりに透かしてみた。六条の煌きが美奈子の瞳を撫でる。胸中に一粒の幸せが拡散した。喜びのれながら、優雅にラテを口につける。その流れを何回も繰り返し、心をピンポン玉のように弾ませ、月曜日の早めの朝を浮き浮きと楽しんだ。
 美奈子は六条の煌きを見るうちに、占いの館の老婆の言葉を思い出した。「彼氏からアプローチしてくるようになる」という言葉だった。
(本当なのかな。楽しみだわ。会社に着いたら、川村さんに早速試してみようかしら。レッドローズ作戦と名づけようかな。でも、ダメ! もし、そんな力がなかったら。また、恥をかくことになる。二度続けての失敗は、さすがにヤバイわよね・・・・・・)
 美奈子は銀色のフォークを口にくわえながら、顔に険しい山を浮かべた。
 暫くして美奈子は、急に目の前で大きく両手を叩き、天井を見上げた。顔から大きな笑みを零し、瞳を大きくした。
(直樹で試してみるのが無難だわ。彼なら後輩だし、私の番犬みたいなものだから失敗しても多分大丈夫よね。ヨシ! トライアルローズ作戦と名づけよう。成功したら、すぐにレッドローズを実行するわ。そうすれば、私にもいよいよ本当の春が、えへへっ・・・・・・)
 美奈子は暖かい風が流れ抜ける草原のように顔を広げ、両手を目の前で合わせ、胸を躍らせた。勢い良く立ち上がると、軽いスキップを踏んで店を出た。
道玄坂の上り道は体が軽かった。サラリーマンの人の波を軽快にかき分けて進んでいく。美奈子が身に着けているヒップハングでプリーツタイプの白いミニスカートも、愉快に裾をなびかせていた。
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